刑事事件1

最近立て続けに,私共の事務所のある阪神地域でも親子間での殺傷事件が報じられています。

多くの方は無縁な生活を送っていらっしゃると思いますが,それでも万引きや痴漢等の犯罪は身近なものですし,いつ被害者になってしまわないとも限りません。

今日は,犯罪を犯してしまった場合の話をしましょう。

多くの犯罪では,ものすごくシンプルに言うと,逮捕→勾留→起訴→判決という手順を取ります。

逮捕から勾留までは最大72時間,勾留されて起訴までは原則10日,延長されるとさらに10日(例外的にさらに5日延長可能),起訴されたあとは判決まで勾留が続きます。執行猶予判決ならその場で釈放,実刑判決ならそのまま勾留です。起訴から判決まで,1ヶ月半~2ヶ月くらいはかかるのが普通ではないかと思います。

そうすると,一回逮捕されてしまうと,最低でも2ヶ月~3ヶ月くらいは身体の拘束を受けるわけで,仕事をしている人などは首になる可能性も大きいですね。

起訴後は保釈といった制度もあり,最近はずいぶんと保釈請求が認められる傾向にありますが,それでも10数日~20数日の身柄拘束を受けるわけで,本当に逮捕勾留されるということは社会的なダメージが大きいのです。

もちろん,逮捕されるような犯罪を犯したわけで(軽微な犯罪ですと,お叱りを受けるだけで終わったり,逮捕されずに在宅のまま捜査→起訴→判決ということもありますので,逮捕されるということは軽微な犯罪ではないんですね。)社会はそう甘いものではないのです。

まずは真面目な社会生活を送っていただくことですね。真面目に暮らして損はないです。

  (榎本)

介護事故

お年寄りの方が遭う「事故」といえば,交通事故をイメージされる方が多いと思いますが,介護事故も見逃すことはできません。介護施設内の転倒・転落事故,送迎中の車イス等からの転落事故,誤嚥事故などは,意外に多く耳にします。

こうした介護事故に遭ったときに,本人又は家族が,弁護士等法律家に対応を相談するケースは少ないようです。なぜでしょうか。「○○施設の△△さんには,いつもお世話になっているから。」とか,「弁護士に相談して,損害賠償を請求すると,○○施設には居られなくなる。」,「ここを出たら,行く当てがない。」などという遠慮や懸念が大半と言われています。しかしながら,本人が死亡したり重大な後遺障害が残ったり,あるいは,施設側の対応が著しく不誠実であったりすると,さすがに本人や家族も納得できず,弁護士等に相談してこられます。

介護事故の場合,利用者と介護事業者(介護施設)との間で,介護サービス提供契約を締結していますから,事業者には,契約に盛り込まれた介護サービスについて適切なサービスを提供する義務があり,これを果たさなかったことについて過失がある場合,その事故により起きた損害について賠償責任(債務不履行責任・不法行為責任)が発生します。

利用者や家族からすれば,介護のエキスパートから適切な介護サービスを受けるために,決して安くない利用料を支払っていたのですから,適切な介護サービスを受けられずに事故に遭い,損害を受けた場合,その回復を図るのはきわめて当然のことであり,何ら遠慮することはありません。損害賠償を請求したからといって,そのことを理由に退所を迫られたり,サービス提供を拒否されることもありません。もし介護事業者がそのようなことをしたら,そのこと自体が慰謝料請求の根拠となることでしょう。

弁護士が相談を受けて,介護事業者や介護職員(介護事業者の契約履行補助者)の介護サービスに過失があると一応判断した場合,まずは,事業者に対し,事故に至る経緯や原因,受傷状況等について説明を求めるなどして,事実関係の調査をするのが通常です。それと並行して,事業者の過失の有無,程度,事故と受傷との因果関係等にかかわる証拠収集をし,そのうえで,当該紛争を解決するにあたって,示談交渉,調停,訴訟のどれがベストかの選択をしていきます。この選択は,本人や家族の意向に影響されるところであり,事案によって異なると思います。いずれにせよ,介護事故に遭ったら,まずは弁護士に相談した上で対処していくのが賢明と考えます。

(中西)

歩行者と自動車の交通事故

「歩行者は交通弱者」「歩行者は手厚い保護を受けるべき」と思って,危険を顧みない歩行をする人がいます。

確かに一般的な話しでいうと間違いではないのですが,いざ歩行をしていて自動車にはねられた場合,必ずしも歩行者がいつでも手厚い保護を受ける訳ではありません。

例えば,歩行者が赤信号で横断歩道を渡っていて車にはねられた場合,過失割合は歩行者:車=7:3になります。

また,道路を横断していて車にはねられた場合,歩行者:車=2:7になります。(実際にはさらに具体的事情を加味しますが)

歩行者に過失がある,とされる割合の部分については,損害賠償を受けることができなくなります。例えば,ものすごく単純な話しをすると,歩行者が信号無視をして道路を歩行中にはねられて大けがをし,治療費に100万円かかった場合,歩行者は自腹で70万円を支払わなければならなくなるわけです。(実際には過失が多くても自賠責から支払を受ける分があったりしますので,もう少し歩行者の負担は軽くなりますが)

ですから,歩行者といえども,いつでも守られるべき弱い存在なんだと我がもの顔で道路を歩くのではなく,きちんと交通法規を守り,お互いに譲り合いの気持ちをもって歩行しましょう。

また,歩行者に過失割合が認められる場合,自由診療で治療を受けるととんでもない金額の支払い義務を歩行者が負う可能性があるので,健康保険を利用して治療を受けることを考える必要もあります。

(榎本)

増えています!出会い系サイト被害

出会い系サイトに関する被害が増えています。

被害例として多いのは,携帯電話やパソコンを通じて,興味本位で出会い系サイトを利用していたところ,利用するサービス毎にポイントが設定されており,最初の無料サービスポイントをあっという間に使い切ってしまい,知らぬ間に,利用料が数十万円から数百万円になっていたというものです(*出会い系サイト上では,掲示板に投稿するには1回20ポイント,閲覧は5ポイント等と設定されており,利用者は,1ポイント10円で換算されるポイント数をクレジットカード等で購入します。)。

こうした被害に遭われる方は意外に多く,被害に遭ったと相談に来られる方には,主婦など女性が多いことも特色と思われます。

これがどうして被害にまで発展するのだろうかと,疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。それは,「サクラ」の存在です。出会い系サイト上の「サクラ」とは,サイト利用者を装って,サイト利用者に対し,無意味なメールの送受信や画像の閲覧等をさせるなど,サイト利用者に無駄なポイント消化を促す役割を担うサイト側の人間です。「サクラ」がサイト利用者を騙して無駄なポイントを購入させればさせるほど,サイトを運営する会社にポイント数相当の売上げが収入として入る仕組みです。

「サクラ」は,サイト利用者に対し,「あなたに会いたい。会ってくれれば,○○しますし,その場で100万円を援助できます。」などという性的な含みや金銭援助を示す内容のメールや投稿を送ってきます。しかし,異性と会う目的,お金をもらう目的,いずれの目的にしても,実際に会うことはできず,当然,お金を援助してもらうこともできません。「サクラ」は,車が故障,急に体調不良,家族が急逝した等もっともらしい理由を述べて,会う機会を先延ばしにし,利用者が「何かおかしいぞ。」,「私,騙されてるのかしら。」と気づくまでの短期間に,メール送受信等により無駄なポイントを大量に消化させます。中には,利用者の悩みを親身に聞くふりして,利用者の信心深さに訴え,「あなたは呪われているからお金を受け取れない。受け取りたければ,経文を打ってお祓いしなさい。」などと指示し,長文の経文をメールで何百回も送信させた被害例もありました。

このような出会い系サイトに関する被害にあった場合,被害回復は,なかなか困難です。「サクラ」の特定,及び,その者が「サクラ」であることの立証は容易ではありません。平均的な被害額が数十万円~100万円程度という中途半端な額であることも,訴訟等断固とした法的措置を講じるのに二の足を踏んでしまう理由かもしれません。また,配偶者がある方の場合は,そもそも出会い系サイトを利用していたこと自体,配偶者に知られたくないという思いもあることでしょう。

しかし,実際に被害に遭った場合は,やはり弁護士に相談されることをお勧めします。2010年5月19日の新聞報道によると,東京都,大阪府,岐阜県の30~40代の女性が,出会い系サイト運営会社等を相手取り,慰謝料等計約800万円の損害賠償訴訟を東京地裁に提起したようです。この訴訟の行方は大変気になるところですが,訴訟に限らず(というより,その前提として),任意交渉によって,返還される例もないわけではありません。私が扱ったケースのうち,1件は,被害全額(101万5000円)を回収でき,あとの1件は,サイトを運営する会社(の代理人弁護士)との間で示談交渉し,300万円(返還請求額約600万円)を返還してもらう合意を締結することができました。もちろん,このように実際に回収できるケースは極めて少なく,大半は泣き寝入りで終わることが多い現実は知って頂く必要がありますが,少なくとも,自分のケースの場合に回収が可能かどうかの判断は,法律の専門家である弁護士に相談した上で決定するのが適切と考えます。 そして,何よりも,以後は,「絶対に騙されない」,「甘い話に乗らない」ことが大変重要となります。

(中西)

貸金業法改正

貸金業法は,貸金業を営む者を規制する法律ですが,昨今の多重債務問題が社会問題化するに伴って改正を加えられ,今年平成22年6月からは,一般市民にも大いに関係する次のような改正が実施されます。

①貸金業者が個人へ貸し付ける場合には、指定信用情報機関の信用情報を利用した返済能力調査が義務づけられます。

②また、個人への貸付けについて、(1) 自社からの借入残高が50万円超となる貸付け、又は、(2) 総借入残高が100万円超となる貸付け,の  場合には、貸金業者に年収等を証する資料の取得が義務づけられることとなります。

③調査の結果、総借入残高が年収の3分の1を超える貸付けなど、返済能力を超えた貸付けが禁止されます。売却可能な資産がある場合な  ど除外・例外貸付けは除かれます。

④貸金業法上の「みなし弁済」制度(グレーゾーン金利)を廃止し、出資法の上限金利を20%に引下げます。これを超える場合は刑事罰の対   象となります。

今まで複数の消費者金融からお金を借りては返すという自転車操業で生活をしていた人が,今後新たな借り入れができなくなる可能性が大きいわけです。それで,「違法な金利のヤミ金に借りざるを得ない人が増える」と批判されているわけです。

しかし,自転車操業をしないと生活ができない状態にあるということは,すでにその人の経済力を超えた借金をしており,完済は不可能な場合がほとんどです。

ですから,今回の法改正は、国家の方針として、「従来どおり自力での解決が不可能な多重債務状態ができても解決を先送りにして多重債務者が莫大な数になるのを許容するのか、それとも借金問題は早々に片付けさせるのか」という選択肢のうち、後者を選んだわけです。

それで、今後,新たな借り入れを消費者金融から断られて現金を得る途を絶たれた,という人は,その時点で返済をあきらめ,債務の整理(破産や再生,任意整理)をしなければなりません。

そのときには,ヤミ金に手を出してやくざやチンピラに追われるか,弁護士に相談して借金から解放されるか,どちらかを決断しましょう。

取るべき結論は明白ですね。まともな弁護士なら,ご自身の資力に配慮して費用を考えますので,安心して相談してください。

(榎本)

ノーリードで犬を散歩させると,違法?

日本のペットの代表といえば,犬ですね。当事務所の近くの夙川公園(桜の名所です)を散歩していると,愛犬を連れて散歩されている方々と頻繁にすれ違います。しかし,たまに,犬にリード(引縄,鎖等)をつけずに,又は外した状態(いわゆるノーリード)で散歩をさせている方々も見うけられます。

ノーリードで犬を散歩させることは,違法でしょうか。

動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護管理法」といいます。)は,動物の所有者又は占有者は,「動物が人の生命,身体若しくは財産に害を加え,又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない」(同法7条1項)としたうえで,動物の飼養及び保管に関する具体的な基準の制定を環境大臣に委ねています(同条4項)。これを受けて,環境大臣は,「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」を制定していますが,その第5では,犬を道路等屋外で運動させる場合には,犬を制御できる者が原則として引き運動により行うことと定められています。

文言上は,「原則として」とあるので,おとなしくて躾のいきとどいた我が家のワンちゃんは例外的にノーリードでも許されるのではないか?と解釈される愛犬家もいらっしゃるかもしれません。しかし,動物愛護管理法は,地方公共団体に対し,動物の飼養及び保管に関して必要な措置を講ずることができるとしており(同法9条),この規定を受けて,各地の地方公共団体は,大抵,「ノーリードでの散歩はダメよ」という規定を設けています。

例えば,当地の兵庫県の「動物の愛護及び管理に関する条例」をみると,第12条で,「飼い犬の所有者等は,当該飼い犬が人の生命等に害を加えないように,これを鎖等でつないでおかなければならない。ただし,次に掲げる場合(以下の(1)から(6))で当該飼い犬が人の生命等に害を加えるおそれがないときは,この限りでない。

(1) 生後90日以内の飼い犬を飼養し,又は保管する場合

(2) 飼い犬をおりに入れて飼養し,若しくは保管し,又は囲い等の障壁の中で飼養し,若しくは保管する場合

(3) 飼い犬を鎖でつなぐ等の方法で連れ出す場合

(4) 飼い犬をおりに入れる等の方法で移動させる場合

(5) 飼い犬を訓練し,又は競技等に参加させる場合

(6) 飼い犬を狩猟,犯罪の捜査,障害者の介助等のために使用する場合」

と定められており,この遵守事項に違反すると,10万円以下の罰金が科される場合があります(同条例39条3項(1))。

このように,当地(兵庫県)では,生後90日を越えた犬を連れて屋外を散歩する場合は,かならず鎖等でつないでおかなければならず(「当該飼い犬が人の生命等に害を加えるおそれがないとき」という但書きに該当する場面・状況は基本的に想定できませんので。),いわゆるノーリード状態で犬を連れての散歩は,条例違反ということになります。

では,兵庫県以外ではどうなのかと問われても,各地の条例を一つ一つ検証していないので分かりません。犬を飼っておられる方でノーリードでの散歩を望まれる方は,各地の弁護士会又は地方公共団体が開催している法律相談会などで直接ご確認ください。

なお,現在,東京都における同趣旨の条例等を誤解ないし曲解して,ノーリードでの犬の散歩も許されるのだという見解をインターネット上で披露している「愛犬家」もいるようですが,珍説ですので,無視するのが賢明です。

(中西)

弁護士による生活保護の申請援助

2009年以降,生活保護の申請件数が急激に増加しています。私自身も,代理人として生活保護の申請に同行する機会が多くなりました。

生活保護制度は,健康で最低限度の生活をする権利を保障した憲法25条,生活保護法に基づく国の制度です。「最低限度の生活」というくらいですから,支給される保護費は,元来,けっして多額とはいえない額(地域,家族構成,年齢等によって支給額が異なります)なのですが,不況下の現在は,それ以下で生活をやり繰りしている世帯が相当数に上るのでしょう,生活保護の申請件数が鰻上りに上昇しています。

そのような世帯は,居住する市町村役場の福祉事務所に生活保護の申請をすれば,すぐに受給できるのでしょうか。必ずしもそうではありません。申請をしようと福祉事務所の窓口に行っても,すぐには申請を受理してくれないケース(正確に言えば,申請行為は口頭でも成立するので,「受理してくれない」ケースなどありえません。)が多々あります。例えば,役所側は,申請者が窓口に来ると,法律上の根拠を持たない様々な添付書類や誓約書の提出を求め,それらをそろえてから再度申請するようにと言ってきますが,指示された書類をきちんと揃えられる人はそう多くありません。

また,心身に疾患があったり病弱であったりして就労できない方でも,年齢が若ければ,まずは就職活動をしなさいといった「指導」がなされて,追い返されるケースもよく聞きます。さらには,「家族に援助してもらいなさい。」,「家賃が高すぎる。」,「(路上生活者に対して)家を見つけてきてから。」などと述べ,申請者において対応困難な要求を突きつけて疲弊させ,申請を諦めさせます。

このような福祉事務所の対応は,窓口という「水際」で申請者を「撃退」することから,「水際作戦」と言われています。法律上の根拠に基づかない行政の運用・対応は,違法行為となりますが,福祉の現場ではこうした違法行為が散見されるのが実情です。

弁護士は,あらゆる法律事務を取り扱うことができますから,当然,生活保護申請の代理援助も行えます(もっとも,厚労省は,昨年以降,生活保護の申請は「代理になじまない」と異論を唱え,弁護士等を福祉の現場から排除しようとしています。)。弁護士が同行すると,すぐに申請を受理してもらえますし(もちろん,保護の支給決定を得るためには受給条件を満たすことが必要です。),違法な要求・対応を受けることが少なくなります。

しかし,たいへん残念なことに,生活保護申請の代理援助を取扱業務としている弁護士はきわめて少数です。その意味で,真に生活に困窮している方が,生活保護申請の代理援助を取扱業務としている弁護士に「辿り着くこと」,「つながること」は非常に重要なことです。私としては,生死に関わるかもしれないこの業務を自身の取扱業務から除外することはできないと考えており,相談があれば,面談のうえ,受給条件を満たすかどうかを速やかに調査し,満たすと判断したときには受任し,原則として受任後4日以内(但し,神戸・芦屋・西宮・尼崎・伊丹・宝塚等の近距離圏内を想定しています。)に保護申請に同行するようにしています。

このコラムをお読みになっている方,あるいは,お知り合いの方で,日々の生活に困窮している方はいらっしゃいませんか。生活保護申請に関する相談料・弁護士費用は無料です。ぜひ,ご相談ください。

注)生活保護制度の理念にそぐわない方(浪費・ギャンブル癖のある方,客観的に働ける状況にあるのに意図的に働かない怠惰な方,社会的に非常識な見解や意見に固執する方など)の相談・委任は一切お受けしません。

(中西)

弁護士名での内容証明

何らかの紛争に直面して,当事者間で幾度か話し合いを持ったものの,相手の態度が悪く,一向に埒があかない,ここは一つ,弁護士の名前で内容証明を送ってガツンッと言ってもらえれば相手もおとなしくなってひれ伏すかも・・・。

このような次第で,弁護士に内容証明を送ってもらうことを検討しておられる方がいらっしゃるかも知れませんね。そういう方に以下の点を考慮いただきたいと思います。

内容証明とは,文書の内容と存在を郵便局(今は郵貯事業(株)ですね)が証明してくれるお手紙のことです。「こういう手紙を送りました」と後で裁判所に証拠として出すときに,本当に手紙が相手に着いたかどうかや,どんな手紙を送ったかということでトラブルにならないというだけのことです。ですから,内容の真偽や正当性は一切関係ありません。

弁護士名で送ることがなぜ威力があるのか,私なりに考えてみると,それは,①弁護士が調査の上作成しているので,内容が真実とされる可能性が高い,言い変えれば,書いている内容は裁判でもきちんと立証してくる可能性が高い,②内容証明に対して否定的な態度を取っていると,弁護士が平気で裁判を起こしてくる,ということにあると思います。

私としては,①は弁護士による個人差もありますし,事案によっては事実が不明確なまま内容証明を送ることもあり,一概には言えないでしょうが,②は,多くの場合本当です。

逆に言うと,裁判を起こす可能性がない場合,当方に裁判に勝つ見込みが薄い場合,またそもそも弁護士名の書面を送ることだけが目的で,その後の交渉権限も弁護士には与えないような場合には,弁護士名での内容証明の効果は極めて限られたものになり,その価値も下がってしまうわけです。

そういうわけで,単に「虎の威を借る狐」のように弁護士名の内容証明を利用するのではなく,内容証明を送った後にも相手の反応如何に関わらずきちんと当方の主張を貫き通せるか,つまり裁判になったときにも勝算があるかを見極めた上で,内容証明を送る,ということになるかと思います。

(榎本)

違法データのダウンロード

皆さんは、インターネットをよくご利用されていることと思います。

インターネットの発展により、衣料品や食料品ほか、音楽や映画までも、インターネットで購入する方が多くなってきました。

それに伴い、著作権法で保護されるべき著作物(音楽や映画など)が、容易にインターネットで無料で入手でき、著作権者やその他の権利者が本来受けるべきであった多額の対価を受けることができないという事態がまかりとおってきました。携帯電話による音楽のダウンロードについていえば、正規市場では3億3000万曲、一方で違法なダウンロードが4億曲という事態になっていたそうです。権利者の方々は大変な損をしていると思います。

これでは、著作権者の制作意欲はなくなってしまいますね。優良な曲や映像の制作が行なわれなくなってしまいます。

そこで、平成21年著作権法改正(平成22年1月1日施行)によって、この点で重要な改正がなされました。

それは、①インターネット販売等で、海賊版と承知の上で行なう販売の申出は、権利侵害とする(罰則あり、著作権法113条1項2号)、②違法なインターネット配信による音楽・映像を、違法と知りながら複製することは、たとえ私的使用目的でも、権利侵害とする(罰則なし、著作権法30条1項3号)というものです。

上記の改正で重要なのは、②でしょうか。今までは、私的使用については不問に付されていたのですが、今後は、違法配信と知っていれば、私的使用であってもダウンロードすれば違法になります。

今回、上記の違反行為を逐一処罰することは無理、ということで、罰則規定はもうけられていませんが、今後、技術の発達により罰則規定が創設されるかもしれません。今回の法改正は、違法だと宣言することで、違法ダウンロードをしないように人の心に訴えているのですね。

要は、お金が必要なところはきちんとお金を払って利用しましょう、ということです。1人1人がこの法律を守ることで、優良な曲や映画が作り続けられるのだと、そして文化が今後も発展していくのだからよい投資だと思いましょう。駐車違反も同じですが、少数の人がお金をけちることで、多くの人が迷惑を被る結果はやはり許されるべきではありませんね。

(榎本)

学校内外での事故・事件

学校内外での暴力やいじめの話を聞くと,とても心が痛みます。文部科学省の発表(平成20 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」)によると,2008年度に全国の国公私立の小中高校が把握した学校内外の暴力行為は,5万9618件で,3年連続の増加で過去最多だそうです。いじめの件数は,約8万5000件と前年度の約10万1000件より減少したものの,依然,高い数値となっています。もちろん,これらに認知・把握されていない暴力行為やいじめもあるわけで,それらを含めれば,上記各数字は大幅に増加することでしょう。また,上記発表において,平成20年度に自殺した児童・生徒数は,合計136人(小学校0 人,中学校36 人,高等学校100 人)で,このうち,いじめによるものと認定されたのは3名とのことです。若くして死を選ばざるを得ない状況に追い込まれた子どもたちの心境を思うと,本当に心が張り裂けそうになります。

児童・生徒による暴力やいじめへの対策は,諸説あるところだと思います。

私としては,児童・生徒が当事者となる案件に,弁護士はもっと関与していくべきと考えています。学校内外で発生する事件・事故は,とかく,関係者が感情的になっていますので,弁護士が介入することにより,事案を冷静に整理しながら,解決へと導くことが可能になります。早期に円満解決すればよいのですが,事案によっては,加害者である児童・生徒及びその保護者,学校等に対し,損害賠償請求や刑事告訴等の法的措置を講じるなど毅然とした対応をする場合もあります。子どもが関与していると,様々な影響を慮って,法的責任の追及という点で躊躇してしまう向きもあるようですが,躊躇する必要はないというのが私の持論です。加害者である児童・生徒及びその保護者が誠実な対応をすれば,円満解決の見込みは相当あるのですが,加害者側から,「自分(うちの子)は悪くない。そっちが先に手を出した。」,「自分(うちの子)もケガをした。」,「子ども同士のケンカに親が出てくるな。」,「どっちも悪い。喧嘩両成敗。」などと言われて私の元に法律相談に来られた被害者も結構いらっしゃいます。このような対応をする加害者側は,社会常識から逸脱した身勝手な見解を一方的に主張してきますので,任意交渉での解決は困難です。このような場合には,法的な要件さえ充足すれば,早期に任意交渉を打ち切り,訴訟等法的措置を講じるのが妥当と考えます。

他方で,弁護士は,加害者側から相談を受けることもありますが,その場合には,訴訟等に至らないよう,円満解決を目標に,誠実な対応を心がけます。

いうまでもないことですが,学校内外での暴力行為やいじめは,決して些細なことではありません。直ちに弁護士に相談する案件と考えていただいても結構かと思います。弁護士費用については,法テラス(日本司法支援センター)の費用立替制度が利用できれば,月額5000円からの分割償還が可能です。弁護士費用を心配して,弁護士への相談を躊躇する必要はありません。

(中西)