弁護士による生活保護の申請援助

2009年以降,生活保護の申請件数が急激に増加しています。私自身も,代理人として生活保護の申請に同行する機会が多くなりました。

生活保護制度は,健康で最低限度の生活をする権利を保障した憲法25条,生活保護法に基づく国の制度です。「最低限度の生活」というくらいですから,支給される保護費は,元来,けっして多額とはいえない額(地域,家族構成,年齢等によって支給額が異なります)なのですが,不況下の現在は,それ以下で生活をやり繰りしている世帯が相当数に上るのでしょう,生活保護の申請件数が鰻上りに上昇しています。

そのような世帯は,居住する市町村役場の福祉事務所に生活保護の申請をすれば,すぐに受給できるのでしょうか。必ずしもそうではありません。申請をしようと福祉事務所の窓口に行っても,すぐには申請を受理してくれないケース(正確に言えば,申請行為は口頭でも成立するので,「受理してくれない」ケースなどありえません。)が多々あります。例えば,役所側は,申請者が窓口に来ると,法律上の根拠を持たない様々な添付書類や誓約書の提出を求め,それらをそろえてから再度申請するようにと言ってきますが,指示された書類をきちんと揃えられる人はそう多くありません。

また,心身に疾患があったり病弱であったりして就労できない方でも,年齢が若ければ,まずは就職活動をしなさいといった「指導」がなされて,追い返されるケースもよく聞きます。さらには,「家族に援助してもらいなさい。」,「家賃が高すぎる。」,「(路上生活者に対して)家を見つけてきてから。」などと述べ,申請者において対応困難な要求を突きつけて疲弊させ,申請を諦めさせます。

このような福祉事務所の対応は,窓口という「水際」で申請者を「撃退」することから,「水際作戦」と言われています。法律上の根拠に基づかない行政の運用・対応は,違法行為となりますが,福祉の現場ではこうした違法行為が散見されるのが実情です。

弁護士は,あらゆる法律事務を取り扱うことができますから,当然,生活保護申請の代理援助も行えます(もっとも,厚労省は,昨年以降,生活保護の申請は「代理になじまない」と異論を唱え,弁護士等を福祉の現場から排除しようとしています。)。弁護士が同行すると,すぐに申請を受理してもらえますし(もちろん,保護の支給決定を得るためには受給条件を満たすことが必要です。),違法な要求・対応を受けることが少なくなります。

しかし,たいへん残念なことに,生活保護申請の代理援助を取扱業務としている弁護士はきわめて少数です。その意味で,真に生活に困窮している方が,生活保護申請の代理援助を取扱業務としている弁護士に「辿り着くこと」,「つながること」は非常に重要なことです。私としては,生死に関わるかもしれないこの業務を自身の取扱業務から除外することはできないと考えており,相談があれば,面談のうえ,受給条件を満たすかどうかを速やかに調査し,満たすと判断したときには受任し,原則として受任後4日以内(但し,神戸・芦屋・西宮・尼崎・伊丹・宝塚等の近距離圏内を想定しています。)に保護申請に同行するようにしています。

このコラムをお読みになっている方,あるいは,お知り合いの方で,日々の生活に困窮している方はいらっしゃいませんか。生活保護申請に関する相談料・弁護士費用は無料です。ぜひ,ご相談ください。

注)生活保護制度の理念にそぐわない方(浪費・ギャンブル癖のある方,客観的に働ける状況にあるのに意図的に働かない怠惰な方,社会的に非常識な見解や意見に固執する方など)の相談・委任は一切お受けしません。

(中西)