ノーリードで犬を散歩させると,違法?

日本のペットの代表といえば,犬ですね。当事務所の近くの夙川公園(桜の名所です)を散歩していると,愛犬を連れて散歩されている方々と頻繁にすれ違います。しかし,たまに,犬にリード(引縄,鎖等)をつけずに,又は外した状態(いわゆるノーリード)で散歩をさせている方々も見うけられます。

ノーリードで犬を散歩させることは,違法でしょうか。

動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護管理法」といいます。)は,動物の所有者又は占有者は,「動物が人の生命,身体若しくは財産に害を加え,又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない」(同法7条1項)としたうえで,動物の飼養及び保管に関する具体的な基準の制定を環境大臣に委ねています(同条4項)。これを受けて,環境大臣は,「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」を制定していますが,その第5では,犬を道路等屋外で運動させる場合には,犬を制御できる者が原則として引き運動により行うことと定められています。

文言上は,「原則として」とあるので,おとなしくて躾のいきとどいた我が家のワンちゃんは例外的にノーリードでも許されるのではないか?と解釈される愛犬家もいらっしゃるかもしれません。しかし,動物愛護管理法は,地方公共団体に対し,動物の飼養及び保管に関して必要な措置を講ずることができるとしており(同法9条),この規定を受けて,各地の地方公共団体は,大抵,「ノーリードでの散歩はダメよ」という規定を設けています。

例えば,当地の兵庫県の「動物の愛護及び管理に関する条例」をみると,第12条で,「飼い犬の所有者等は,当該飼い犬が人の生命等に害を加えないように,これを鎖等でつないでおかなければならない。ただし,次に掲げる場合(以下の(1)から(6))で当該飼い犬が人の生命等に害を加えるおそれがないときは,この限りでない。

(1) 生後90日以内の飼い犬を飼養し,又は保管する場合

(2) 飼い犬をおりに入れて飼養し,若しくは保管し,又は囲い等の障壁の中で飼養し,若しくは保管する場合

(3) 飼い犬を鎖でつなぐ等の方法で連れ出す場合

(4) 飼い犬をおりに入れる等の方法で移動させる場合

(5) 飼い犬を訓練し,又は競技等に参加させる場合

(6) 飼い犬を狩猟,犯罪の捜査,障害者の介助等のために使用する場合」

と定められており,この遵守事項に違反すると,10万円以下の罰金が科される場合があります(同条例39条3項(1))。

このように,当地(兵庫県)では,生後90日を越えた犬を連れて屋外を散歩する場合は,かならず鎖等でつないでおかなければならず(「当該飼い犬が人の生命等に害を加えるおそれがないとき」という但書きに該当する場面・状況は基本的に想定できませんので。),いわゆるノーリード状態で犬を連れての散歩は,条例違反ということになります。

では,兵庫県以外ではどうなのかと問われても,各地の条例を一つ一つ検証していないので分かりません。犬を飼っておられる方でノーリードでの散歩を望まれる方は,各地の弁護士会又は地方公共団体が開催している法律相談会などで直接ご確認ください。

なお,現在,東京都における同趣旨の条例等を誤解ないし曲解して,ノーリードでの犬の散歩も許されるのだという見解をインターネット上で披露している「愛犬家」もいるようですが,珍説ですので,無視するのが賢明です。

(中西)