何らかの紛争に直面して,当事者間で幾度か話し合いを持ったものの,相手の態度が悪く,一向に埒があかない,ここは一つ,弁護士の名前で内容証明を送ってガツンッと言ってもらえれば相手もおとなしくなってひれ伏すかも・・・。
このような次第で,弁護士に内容証明を送ってもらうことを検討しておられる方がいらっしゃるかも知れませんね。そういう方に以下の点を考慮いただきたいと思います。
内容証明とは,文書の内容と存在を郵便局(今は郵貯事業(株)ですね)が証明してくれるお手紙のことです。「こういう手紙を送りました」と後で裁判所に証拠として出すときに,本当に手紙が相手に着いたかどうかや,どんな手紙を送ったかということでトラブルにならないというだけのことです。ですから,内容の真偽や正当性は一切関係ありません。
弁護士名で送ることがなぜ威力があるのか,私なりに考えてみると,それは,①弁護士が調査の上作成しているので,内容が真実とされる可能性が高い,言い変えれば,書いている内容は裁判でもきちんと立証してくる可能性が高い,②内容証明に対して否定的な態度を取っていると,弁護士が平気で裁判を起こしてくる,ということにあると思います。
私としては,①は弁護士による個人差もありますし,事案によっては事実が不明確なまま内容証明を送ることもあり,一概には言えないでしょうが,②は,多くの場合本当です。
逆に言うと,裁判を起こす可能性がない場合,当方に裁判に勝つ見込みが薄い場合,またそもそも弁護士名の書面を送ることだけが目的で,その後の交渉権限も弁護士には与えないような場合には,弁護士名での内容証明の効果は極めて限られたものになり,その価値も下がってしまうわけです。
そういうわけで,単に「虎の威を借る狐」のように弁護士名の内容証明を利用するのではなく,内容証明を送った後にも相手の反応如何に関わらずきちんと当方の主張を貫き通せるか,つまり裁判になったときにも勝算があるかを見極めた上で,内容証明を送る,ということになるかと思います。
(榎本)