増えています!出会い系サイト被害

出会い系サイトに関する被害が増えています。

被害例として多いのは,携帯電話やパソコンを通じて,興味本位で出会い系サイトを利用していたところ,利用するサービス毎にポイントが設定されており,最初の無料サービスポイントをあっという間に使い切ってしまい,知らぬ間に,利用料が数十万円から数百万円になっていたというものです(*出会い系サイト上では,掲示板に投稿するには1回20ポイント,閲覧は5ポイント等と設定されており,利用者は,1ポイント10円で換算されるポイント数をクレジットカード等で購入します。)。

こうした被害に遭われる方は意外に多く,被害に遭ったと相談に来られる方には,主婦など女性が多いことも特色と思われます。

これがどうして被害にまで発展するのだろうかと,疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。それは,「サクラ」の存在です。出会い系サイト上の「サクラ」とは,サイト利用者を装って,サイト利用者に対し,無意味なメールの送受信や画像の閲覧等をさせるなど,サイト利用者に無駄なポイント消化を促す役割を担うサイト側の人間です。「サクラ」がサイト利用者を騙して無駄なポイントを購入させればさせるほど,サイトを運営する会社にポイント数相当の売上げが収入として入る仕組みです。

「サクラ」は,サイト利用者に対し,「あなたに会いたい。会ってくれれば,○○しますし,その場で100万円を援助できます。」などという性的な含みや金銭援助を示す内容のメールや投稿を送ってきます。しかし,異性と会う目的,お金をもらう目的,いずれの目的にしても,実際に会うことはできず,当然,お金を援助してもらうこともできません。「サクラ」は,車が故障,急に体調不良,家族が急逝した等もっともらしい理由を述べて,会う機会を先延ばしにし,利用者が「何かおかしいぞ。」,「私,騙されてるのかしら。」と気づくまでの短期間に,メール送受信等により無駄なポイントを大量に消化させます。中には,利用者の悩みを親身に聞くふりして,利用者の信心深さに訴え,「あなたは呪われているからお金を受け取れない。受け取りたければ,経文を打ってお祓いしなさい。」などと指示し,長文の経文をメールで何百回も送信させた被害例もありました。

このような出会い系サイトに関する被害にあった場合,被害回復は,なかなか困難です。「サクラ」の特定,及び,その者が「サクラ」であることの立証は容易ではありません。平均的な被害額が数十万円~100万円程度という中途半端な額であることも,訴訟等断固とした法的措置を講じるのに二の足を踏んでしまう理由かもしれません。また,配偶者がある方の場合は,そもそも出会い系サイトを利用していたこと自体,配偶者に知られたくないという思いもあることでしょう。

しかし,実際に被害に遭った場合は,やはり弁護士に相談されることをお勧めします。2010年5月19日の新聞報道によると,東京都,大阪府,岐阜県の30~40代の女性が,出会い系サイト運営会社等を相手取り,慰謝料等計約800万円の損害賠償訴訟を東京地裁に提起したようです。この訴訟の行方は大変気になるところですが,訴訟に限らず(というより,その前提として),任意交渉によって,返還される例もないわけではありません。私が扱ったケースのうち,1件は,被害全額(101万5000円)を回収でき,あとの1件は,サイトを運営する会社(の代理人弁護士)との間で示談交渉し,300万円(返還請求額約600万円)を返還してもらう合意を締結することができました。もちろん,このように実際に回収できるケースは極めて少なく,大半は泣き寝入りで終わることが多い現実は知って頂く必要がありますが,少なくとも,自分のケースの場合に回収が可能かどうかの判断は,法律の専門家である弁護士に相談した上で決定するのが適切と考えます。 そして,何よりも,以後は,「絶対に騙されない」,「甘い話に乗らない」ことが大変重要となります。

(中西)