犯罪を犯しますと,逮捕・勾留→起訴という流れになることはすでに説明しました。起訴というのは,検察官が裁判所に起訴状を提出して,刑事裁判が開始されることをいいます。このときを境に,捕まった人は,「被疑者」から「被告人」という立場になります。
マメ知識ですが,民事事件の場合の訴えられた人は「被告」と言い,刑事事件の場合の「被告人」とは,一応言い方を変えています。
マスコミもこれを意識して表記していないようで,中には「民事事件で訴えられて『被告』と言われて犯罪者呼ばわりされた!」とお怒りの方もいますが,司法関係者はきちんと理解して使い分けていますので,あまり気にしないで下さい。
刑事事件のほとんどは,犯罪事実に争いのない事件(自白事件)でして,この場合は,弁護人は情状弁護なる防御活動に力点を置くことになります。
この情状弁護というは,被害者に謝罪したり,被告人やその関係者にお金を用意させて被害弁償に励んだり,被告人が更生するために必要と思われること(社会に出たときの受け皿など)を準備したり,ということが中心です。
検察官や警察も裁判所も,被害回復のために具体的に被害者と被告人の仲介をするという活動はしません。そういうのは弁護人ならではの活動ですので,弁護人が大活躍する場面です。
一部のマスコミの話題に上る事件では,被告人側が犯罪事実を否定して,弁護人まで批判される事例がありますが,そういう事例は,極めて数少ないと思います。
しかし,そういう事件は,国家権力と被告人との利害の対立が極めて激しい場面であり,やはり裁判の公平さを担保するためには弁護人が必要です。こういう場面で弁護人がきちんと機能しない裁判は,昔の魔女裁判と同じです。
とりあえず皆様には,弁護人は無駄に付いているのではないと理解していただきたいと思っています。次回以降,もう少し弁護人の地位について書いてみたいと思います。
(榎本)