学校内外での暴力やいじめの話を聞くと,とても心が痛みます。文部科学省の発表(平成20 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」)によると,2008年度に全国の国公私立の小中高校が把握した学校内外の暴力行為は,5万9618件で,3年連続の増加で過去最多だそうです。いじめの件数は,約8万5000件と前年度の約10万1000件より減少したものの,依然,高い数値となっています。もちろん,これらに認知・把握されていない暴力行為やいじめもあるわけで,それらを含めれば,上記各数字は大幅に増加することでしょう。また,上記発表において,平成20年度に自殺した児童・生徒数は,合計136人(小学校0 人,中学校36 人,高等学校100 人)で,このうち,いじめによるものと認定されたのは3名とのことです。若くして死を選ばざるを得ない状況に追い込まれた子どもたちの心境を思うと,本当に心が張り裂けそうになります。
児童・生徒による暴力やいじめへの対策は,諸説あるところだと思います。
私としては,児童・生徒が当事者となる案件に,弁護士はもっと関与していくべきと考えています。学校内外で発生する事件・事故は,とかく,関係者が感情的になっていますので,弁護士が介入することにより,事案を冷静に整理しながら,解決へと導くことが可能になります。早期に円満解決すればよいのですが,事案によっては,加害者である児童・生徒及びその保護者,学校等に対し,損害賠償請求や刑事告訴等の法的措置を講じるなど毅然とした対応をする場合もあります。子どもが関与していると,様々な影響を慮って,法的責任の追及という点で躊躇してしまう向きもあるようですが,躊躇する必要はないというのが私の持論です。加害者である児童・生徒及びその保護者が誠実な対応をすれば,円満解決の見込みは相当あるのですが,加害者側から,「自分(うちの子)は悪くない。そっちが先に手を出した。」,「自分(うちの子)もケガをした。」,「子ども同士のケンカに親が出てくるな。」,「どっちも悪い。喧嘩両成敗。」などと言われて私の元に法律相談に来られた被害者も結構いらっしゃいます。このような対応をする加害者側は,社会常識から逸脱した身勝手な見解を一方的に主張してきますので,任意交渉での解決は困難です。このような場合には,法的な要件さえ充足すれば,早期に任意交渉を打ち切り,訴訟等法的措置を講じるのが妥当と考えます。
他方で,弁護士は,加害者側から相談を受けることもありますが,その場合には,訴訟等に至らないよう,円満解決を目標に,誠実な対応を心がけます。
いうまでもないことですが,学校内外での暴力行為やいじめは,決して些細なことではありません。直ちに弁護士に相談する案件と考えていただいても結構かと思います。弁護士費用については,法テラス(日本司法支援センター)の費用立替制度が利用できれば,月額5000円からの分割償還が可能です。弁護士費用を心配して,弁護士への相談を躊躇する必要はありません。
(中西)